「この野郎ー!!!」
誰に言うでもないが隼人は咄嗟に口に出た。
車が身体にめり込み、頭がフロントガラスに自然の流れで当たる、
痛みが込み上げながらも周りの景色がゆっくり進む。
隼人はこれが走馬灯かと悠長なことを考えれるほどある意味冷静であったが、
一瞬のはずの痛みが、どこが痛いかなどが何故か分かった。
それと同時に闇が身体を包みこみ、
痛みが無くなり始め、不思議な多幸感を感じた。
口や目などから闇が身体に入り込み、
細胞に染み渡る。
「なんだこりゃー!?」とまた声が出た。
それはこう言うことで発せられたのだが、
要約すると身体の隅々まで自分自身の目を通して見えているのだからである。
だが自分でもこれは良くないことだとも分かっていた、
死ぬか化け物になるか勘付くことが容易に想像出来るからである。
すると胸の辺りに別の衝撃が走る、
バイク乗りが俺の胸ぐらを掴んでいた、
いやいやどうやってここまでコイツ来たんだよ。
「あんたを今助ける」
男はそのまま続けて言葉を発した。
「痛いけど我慢しろよ」
このバイク乗りがどうやっているかは分からないが、実態のない闇を掴み俺から引き剥がす。
その時の痛みときたら、今考え直すだけでも気絶しそうだ。
綺麗さっぱりほんの一瞬で闇が身体から抜け、人間に戻った感じだが、
全身に走る痛みに地獄に落ちたんじゃないかと俺の日頃の行いを悔いた。
そして瞬時にそれは死と直結する。
「痛てぇーよ、クソ…」
言葉は果して出てたのか、
バイク乗りが聞いていたのか、「今から助けるって言ってるだろ」だってよ。
さっきのと別の闇が俺の身体に侵入してくるのが、
って、なんでだよ!!!
「もう止めてくれ!!!」
人生で2回生き返る気分だ、
何が楽しくてこんな目に合わなきゃいけねーんだよ。
続く。
0コメント