底の底 [笑う花 9話]

1つの物事が動いてしまうと他のものにも目が向いてしまうことがある。
そして意識していないのにそれは勝手に進み、
己の決断を前にして全てが終わってしまう。

仕事は上手くいってるし、人生の中で一番充実もしている。
こんな時に何をして誰と会いたいのか、
誰と話をして満たされていくのか、
俺は人生でそんな考えや選択肢はなかった。

悩んでしまうと、
とことん悩んでしまうのが俺だ、しかもタチが悪い。

一杯飲んで帰るか。
細い路地にはもう寒い風が吹き始めてる、
秋めいてきた時の寂しさは特に心にくる。

"Bar/alternative"

ここの店でゆっくり酒を飲みながら、
悩みの底の底を漁るとしよう。

バーのマスターと他愛もない話、
あまり悩み事を打ち明けないのだが、今日は冗談も入れつつデートの誘い方を聞いた。

マスターは軽く話を聞くと、
「それはもうデートに誘うと言うよりも、
貴方次第ではないですか?」と言う。
条件は十分揃ってることだし、何を躊躇しているのかと首を傾げられた。

「それよりも別の悩みもありそうですしね」

何故かその言葉が引っかかる、
多分俺のかつての願いは手が届く場所まで降りてきているのだろう。

「まさか彼女と付き合うことが嫌なんですか?いや、まさかね」

そんなことない。

「人が持つ悩みに答えは1つしかないですよ、しかもその答えは自分自身で導いているはずです」

そうだよな…

俺はグラスの酒を飲み干して店を出た。

本当の願いは一体なんなのだろうか、
物悲しい気持ちで電車に乗った。




続く。

雷霆を告げる音

自分のスペースみんなのスペース

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