Bar/alternative[コイン]

今日は物静かな客が多い、
そんな日はレコードでジャズを流すに限る。音量は大きすぎず、世界観を崩してはいけない。

狭い店内だ、異音がしたらすぐに分かる。
チャリン、ジャラジャラ、
カタンカタン、ジャリジャリ。
明らかに複数枚のコインをテーブルに投げては回収する人間がいる。

こんな状況でよく出来るなと、
少しガッカリした。

あと一度同じことをしようものなら注意しなければならない、だがそれは必要なかったらしい。
コインを投げる彼は、私のいるカウンターに来た。

彼は自分自身がマジシャンみたいなもので、
コインマジックの練習をしていたことを謝罪した。
だがそれは口実だったのだろう、
カウンター席に座る2人の男女と私を含めて、目の前で即興で手品を見せてくれた。

手の平にコインが5枚、
彼がそれを握りすぐに開くとコインがない、
無いかと思えば指を鳴らす様な動作で1枚出した、1枚を見せながら2枚、3枚と次々出す。

全部出すと、カウンターに全部投げてみせた。

その中から1枚を人差し指で抑えながら、
私のほうのテーブルの際から落ちない様にとったかのように見えたが、そのコインはなかった。

それはとても鮮やかで、30秒に満たないパフォーマンスだった。

すると彼は、
「一つ僕と、賭けをしませんか?
僕のコインが左右のどちらの手にあるか当てるゲームです、
皆さまが当てれば一杯奢ります、僕が欺けたら、この指輪を一週間預かってもらいたいのですが?どうですか?」と言い出した。

それは賭けというのか?高価そうな指輪を預かるだけのゲーム、
当てても負けても損はしない。
胡散臭いし私はごめんだ、この話を降りた。

男女はそれを快諾し、
ゲームを始めてた、
そのゲームの結果は目に見えているだろう。

私はそれを見ているだけだった。

それでは今日のお話が楽しめたなら、次のお酒を頼んでいただければ嬉しいです。

雷霆を告げる音

自分のスペースみんなのスペース

0コメント

  • 1000 / 1000