音を立てずに金庫に近づく私は、赤ちゃんのハイハイをするような形で、
宝箱を開ける探検者みたいに目を輝かせた。
そっと開いていない金庫に手をかけた、
それは簡単に開いた、私たちが遊びでやったそれとは違う、
答えが分かり簡単に文字や言葉が出るような感覚に近かった。
ゆっくり開けると木のタンスがあり、観音開きの扉をワクワクしながら
両手を使い一気に開けた!
でも煌びやかな物なんてなく、紙の束に白い封筒
下の段にも今思えば手帳と思われるものと、黒い箱。
それを持ち上げようとすると、私の両腕を優しく抱えるようにおじいちゃんが
一緒に持ち上げてくれた。
私の名前を言いながら、これは大事なものなんだよと、
そしておじいちゃんが言い加えて、中身はまだ分からないはずだから
6年生になったら教えてあげよう、
そう言ってくれた。
6年生になるとおじいちゃんはそれが帳簿だってことを教えてくれた。
まだ当時の話を続けます、
さっき言った白い封筒にこの話の訳があります。
その時は、おじいちゃんの話を聞きながら金庫を閉じた。
閉じた後に、私の手を取りダイアルを優しくゆっくり回して教えてくれた。
小さい時の記憶は何故か些細なことを覚えているんだけど、
これは些細なことではない、絶対に合わない数字に私は悩まされる。
そして、私が高校生になった時おじいちゃんが亡くなってしまった。
空が明るいうちに私は、叫ぶように泣いたのを覚えてる。
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