ジャングルクルーズ

私は息を整える、

動植物に私の存在を知られてはいけないように。

心臓、血の流れ、手の痺れ、足の震え、目の焦点、

完全に地球と一体化するように、心の不穏な状況がさっきまでの

慌しさから全く感じさせないように。


一呼吸で肺に空気が満ち、脳に酸素が入り鮮明になる、

私の持つ弓はピンと張り、手のブレがなくなるその瞬間まで集中する。

朽ちた建物の躯体が剥き出しになった僅かな隙間。


風が止んだ。


弓矢を放ち、小さな空間にするりと滑るよう祈る。

その感覚は超振動のように空気、空間、時間までも反応する、

風も振動も重力でさえも味方した。


すると40メートルほど先から、獣の声が僅かに漏れた。

当たった対象物が放った最後の嗚咽であろう。

深い呼吸を静かに長く吐く、

この緊張は心身共に疲弊させた。


集めてた銅メダルに、クリスタルの裸眼、ルビーのナイフ、そして金の砂時計

私は今まで手に入れてきた宝物を静かに確認した。

建物に接近するには、危険を排除しなければならないが

まさか金色に輝く獅子が居るんなんて誰が思う?


木の上から双眼鏡を覗き、再度安全を確認した。

私の関係のない荷物は重すぎるし置いて行こう、私は短期決戦が好きだ。


ここで言うのもなんだけど好きなものは林檎、良い男、そして目の眩むような財宝、

そして私自身の身体、

私自身を信じるようにそこに近づく。

闇を動くように、風を避けように私は音を嫌い、その道のりをゆっくり歩く。


金色に輝く獅子は赤黒く血煙を上げていた。

その死体のすぐ近くに階段があり、

下の階に行けるようになっていた。


そして下の壁には覆うようにグラスを掲げる巨人の絵が描いてあった、

そのグラスに窪みがあり、クリスタルの裸眼を嵌め込む箇所があった。


金の砂時計を中央のチェストに、ルビーのナイフを死んだ獅子に刺し、

獅子から滴る血は壁に描かれたグラスの中に入れる。

そのグラスにも仕掛けがあり、銅のメダルが入るようになっている、


「知ってるわ、そんなこと」


ゆっくり、ゆっくり獅子の血はグラスから溢れ、

下の床の窪みに滲み、模様が浮かび、金色の獅子の血が赤から煌めきを増し、

血の色は、黄金になった。



「ありがとう、そしてとても美しい」



だが、それは財宝と共にそれを護らんとする、

仕掛けに周囲を囲まれていた。


「怪物が出てこないだけましね」


目の眩む財宝を皆んなに見せられなくて残念。

私はまた、必ずあなたの心を奪いに行く、

それまでは私の暇つぶしに付き合ってね。


- ジャングルクルーズ - End.

雷霆を告げる音

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