BLACKTOWN FUNK

いつだって、この地域はうるさい。

特徴がある場所ではないが、住宅街から都会に差し掛かる手前

二駅分ぐらいの道のりではあるが、ここは何故か光の設置が少ない。

暗く小道も多く、犯罪者もまた多い。


あそこでは、薬かハッパを売ってる奴がいるし、

向こうじゃ喧嘩とは思えない声が聞こえる。

こんな治安じゃ一般人は、夜どころか昼ですら通ることを躊躇う。

住宅街から都会への道は広く整備されているが、車が通ることはなく、

警察車両だけがやけに目立つ。


何故俺がこんな話をするかというと、俺はそこで商売をしてる、

一般人の小遣い稼ぎを助けてる。

自分じゃさばき切れない物を安く買っては、俺が売る。

阿漕かもしれないが互いにそれを理解してやっているし、

裏の道に関わりたくない人間には、手軽なもんだからな。


俺は、小さい時にこの通りで両親を失った。

昔はそこまで治安が悪くなく、両親と近場の映画館に流行りの映画を見に行く、

ただそれだけの簡単な道のりだった。

陽が少し傾きかけていた時、さっきも言ったがここは小道が多い、

そこから3人組の強盗に会った。

ここからは思い出したくもないが、父は俺と母を守るために金を差し出したが、

強盗はそれと、母も要求した。


それはできないと抵抗するも、

人の心を失った奴らには効果はない、あっけなくナイフで刺されてしまった。

痛みに悶えながらも必死に抵抗を繰り返し、その甲斐もあり、

誰かが通報していたのか、大声で強盗共警察を呼んだわよ!と。

慌てて逃げる強盗の一人が、顔を隠していたマスクが剥がれ、顔を露呈した。

それを恐れたその強盗は、父と母を銃で撃ち殺してしまった。


そこから天涯孤独の俺は、

心の病みと両親を撃ち殺した人間の顔が忘れられない、

父が撃たれる前に、"あいつ"の名前を呼んでいたことも。


多分顔見知りか、近所のチンピラかわからないが、

俺はまたこの街に戻り"あいつ"を、


「必ず殺す」


だけど情報もなく、こんな街じゃすぐに死んでるかもしれない、

どうしたものか。

昔の連中は俺がこの街出身とわかるやつも多く、同情からか、細い糸みたいな情報をくれる。

ありがたいがそれでは意味がない。


最近この街に巣を作ったギャングが勢力を広げてきたらしい、

そこにここを昔から縄張りにしていた奴らもそのチームに加入していると聞く。

嗅ぎまわるのは良くないが、少し近づいてみるか。


その辺の人間との商売を辞め、そいつら向けの商売に切り替えた。

まずは薬関係を売っていたが、出入りが多い人物などのマップ情報を売り、

危険だが奴らに近づくことができた。

こんな商売でも、"あいつ"の情報は全くない。

やっぱりどこかで野垂れ死んじまったのか?この心の悔しさと怒りが募るだけだった。


だが、こういう行動ははっきり言ってギャングにも驚異的で、危険視されていた。


いつもどおり、薬と出入りについて商売をしていた時、

頭が弾け飛ぶような強烈な衝撃と、目がくらむような激痛が走った。

鉄パイプか何かで殴られたのか、背後を向くとスーツ姿の男とチンピラが10人ほどいた、

意識が飛ばないように、歯を食いしばったが、身体のバランスが保てない

腰が上がらずその場に座り込んでしまった。


立ち上がらないと殺されると感覚的にわかり、死をも覚悟したが、

こんな声が聞こえた。


「お前、俺のことを探しているんだってな?」

スーツ姿の男は、"あいつ"だった。


俺は叫ぶ前に、"あいつ"に刺された。

耳元でこう囁いた、「いつも殺しは刺すに決まってるんだよ」と。

一箇所肝臓付近を刺され、そして左の手首を深く切られた。


"あいつ"は、俺を見れていた。

「あの時銃を使うつもりはなかった、お前の母親は美人だったし、

勿体ないことをしたよ。

それと人の上に立つっていうのは臆病でなくちゃならねぇ、お前にバレないように必死だった。

この情報はお前の友達からだろ?騙すなら仲間から、だよな」


そうかそうか、そうだったのか。


「血が酷く出てるが、生きてりゃ儲けもんだろ」

俺は肩を軽く蹴られ、完全に倒れこんだ。

雨がシトシトと、俺が今から死ぬことを泣いているかのように、静かに降り始めた。

俺は、"あいつ"が車に乗り、立ち去るのをただただ見ているしかなかった。


少し時間がたった時そこには死があった、が、

俺は胸ぐらをつかまれ起こされた。


「どうも死神です」


「お前を助けてやる」


「ここのエリアの王様にしてやるが、支配は俺がする、契約だ従うか?」


俺は、ベットの上で目が覚めた。

傷口は縫われ治療を施されていたが痛みはまだあったが、

目にチラつくように俺の左手首に小さな黒い布製の包みが括りつけられていた。


それを確認すると、袋一杯のダイヤモンドだった。

死神に魂を売ったのか俺は?


いや死んだ魂を呼び戻されただけだ。


"あいつ"の言葉をそっくりそのまま返しに行ってやる。


- BLACKTOWN FUNK - END.

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