非日常 [黒と白 2話]

階段を一つ飛ばしで降りる、
駐輪場は階段下のすぐ横にある。
だが降りてくる最中に自転車の鍵を忘れてたことに気づいた。

「やべぇやべぇ」

声に出る、急いで部屋に戻り鍵を取る。
こんな数十秒ですら危機感が込み上げてくるのがわかる。
自転車の鍵を外し、全速力でペダルを漕ぐ!

ありゃー一体なんだ?
それとあのバイク乗ってるやつもなんなんだよ全く!

そのまま酔っているのに頭は冴え、
酔っているどころじゃない。
隼人は一体どこに逃げればいいか考えた、
考えてどうこうできる訳じゃないが一旦後ろ振り向く。

…するとどうだ?案外ユラユラは速くない、
でもよく見ると、何というか波だ。
海の白波が海岸に打ち上がるように、一定の間隔で干潟に潮が満ちるような感じで、闇がユラユラと進んでいる。

歩いたり走ったりすると追いつかれそうだが、自転車なら時折休めそうな感じだ。

「はぁはぁ、はぁはぁ、はぁはぁ」

でもあんまり長くは持ちそうにない、
焦らずひたすら波とは逆に進めば何とかなりそうだ。
隼人は自転車を走らせ、今の状況をどう打開するかを思考を巡らせている。

「さっきのバイク乗りを探さないといけないかもな」

ちらっと後ろを見る、波は一定の速さで来ている。
大丈夫だ、大丈夫のはずだ。
するとどうだ、人間というのは安心するといけない、
そこには隙が生まれ危機的状況に平和ボケのせいでのらりくらりとしている。

"否"

それは、突然訪れる。
死の神が部屋の扉を"コンコン"と叩く。
闇が手を伸ばすかのように隼人の腕を飲み込もうとしている。

「な!!!なんで!!!?」

自転車を蛇行させ、闇に掴まれないよう前に進む。

人間というのは安心するといけない。

「おい!アンタ!前見ろ!!!前!!!」

隼人は言う、「お前!」

そんな言葉を発せられるほど時間は無かった、
大きな交差点に蛇行しながらも全速力で侵入している。
右側から迫る光に飲まれ、隼人は自転車ごと宙に吹き飛ばされた。

闇はそんな状況を構いもせず、
隼人諸共全てを飲み込もうとしていた。




続く。

雷霆を告げる音

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