次の世代に [笑う花 11話]

ショウが喋らなくなって2ヶ月、
秋の涼しさから寒い北風が吹くようになってきた。

ショウの花は茎から出た葉から一輪ずつ開き、今までの成果を俺の見せつけているかのように咲き誇っていた。

この花は一体なんだったろうか?
何故俺なんかに語りかけたのだろうか。
同僚から貰った種は、芽からやがて花までと、その人生を終える。

最後の花まで、ショウは喋ることなく散ってしまい、同僚から貰った見覚えのある種だけになってしまった。

俺はこれから先も、これを繰り返し、
またいつかショウに会えることを願いながら、日々を生活しよう。

---- 3年後 ---- 

俺は、同僚と結婚して2年が経つ、
そして今妻のお腹には自分の子供がすくすくと育っている。
あの日々を忘れるわけではないが、
ショウが最後に喋った時に言われた「"今を大切にする"とても良い言葉だ」

「その言葉と私のことは、忘れてくれるなよ」

自分で言ったことだが、言葉の意味を今更実感している。
俺の願いは、"自分らしく生きていくこと"だったのかもしれない。
そのお陰で幸せを噛みしめることが出来たよ。
それと今も花を育ててショウの種で初めて、花まで育てることができた。

---- 5年後 ----

子供が今年で4歳になる、
今ではお母さんと手伝いなどをやりたいと言いだしてしっかりお姉さんになってきた。
ショウの花は今ところ順調に毎年花を咲かせてくれてる。
ショウ自体の種はまだ少しあるが、彼の種で出来た花からの種で毎年育てている。

最近は子供がお母さんの手伝いをしたがるので、花の水やりをやらせている。
時折どれぐらいの水の量の加減がわからずに、枯らせてしまうこともあったが良い教育だと思っている。

---- 2年後 ----

俺も会社では忙しいポジションで、
子供も小学生になった。
慌ただしい日々だが、とても充実している。
本当なら兄弟が欲しかったが一人娘で十分だ。

ふと、ショウを想い出す時がある。
ひょっこり俺にまた喋りかけてくれないだろうかと。

寂しいよ。

「お父さん!」

娘が俺を呼んでる。
どうしたの?

「このお花さん変だよ?」

変?何が?色とか形のこと?

「違うの、なんか変だけど…」

言葉出てこない感じか。
何が変なのか言ってみてごらん。

「笑わないで聞いてよ?
このお花さん、エミに話しかけてきたの」

え?

「本当だよ!聞こえないの?」

これって…まさか…
俺には聞こえてないな。

なんて言ってるの?

「うーんとね!」






笑う花 END.

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