今日は仕事が忙しくて帰る時間が遅くなった、
はぁー疲れた、明日も仕事だってことが分かってるからこそ更に疲れる。
機嫌もそんなに良くない時に、
携帯電話から着信がある、しかも非通知でだ。
運転中で非通知なら取るのは億劫だし、非通知は基本的には取らない、
だが、一度ならまだしも、2回目、3回目、4回、これは耐え難い。
スピーカーにして取ってみるか。
「もしもし?あのー誰ですか?」
「ようやく取ってくれましたね東さん」
「どなたですか?」
「誰でもないですよ、僕のことは気にしないでください」
「え?!イタズラですか?」
俺はそれがわかると電話の男の返答を待たずに電話を切った。
するとすぐにまた着信だ、
イライラする、電源を切るか。
メッセージ機能で「車を止めずに電話を取れ後悔するぞ」との文字。
冗談はよしてくれ、
また性懲りもなく着信だ。
よし怒鳴り散らして電源を切ろう。
「おい!馬鹿かお前!イタズラはやめろ」
俺は電話を切る直前に男がこう言う。
「あなたの車に爆弾を仕掛けた!!!」
「はっ?やっぱりイタズラか」
電話を切った。
メッセージ機能で「車のスピードを10キロ以下にすると爆弾が起動して爆発する。
電話を取れ、これは本当だ」
おいおい勘弁してくれ、後で着信拒否しよう。
夜は21時だ、そんなに交通量は多くない、信号機もそこまで多くないが、
この道を通ると大体大きな交差点に出る。
「なんか嫌だな」
一旦10キロってスピードがどの程度かやってみるか…、おっ案外ブレーキ出来るな。
でも、前に車が居たらあっという間だな。
なんか怖くなってきた。
10分ほど少し遅く走らせていると、
また非通知の電話だ。
今度は立場が違う感じだ、出てみるか。
「もしもし」
「東さん、スピードを気にしてるのですか?良い心がけです」
得体の知れない不安感が胃の方から込み上げてくる。
男は立て続けに言う。
「日本人って本当に平和ボケしてると思いませんか?
そしてなんで僕が貴方を"東 正文"と知っていて…」
男は続けて俺の住所、年齢、勤め先、親の名前から元カノの名前まで言ってのけた。
こんな恐怖感は初めてだ、
男は最後にこんな話をした。
「人間って最後にどんなことを思って、死んでいくかを見たくて、貴方を無作為に選びました…、恨まないで下さいね」
電話が切れた後、俺は言いようのない動揺を全身で感じていた。
自分の家までは、後1キロもない所だ、
このまま家につけば今日の終わりだ、
でも本当に爆弾があれば俺と借家の住人にも危険が及ぶ…。
まずは警察に電話してみるか?
でも警察になんて言うべきか、
ただありのまま話をするとイタズラだと思われるし携帯片手に車を運転してたらそれこそ警察にバレたら車を停めなくちゃいけない…。
なんだこの言いようのない状況は…、
マズい!考え過ぎたせいか家に着きそうだ、
一旦ドライブがてら考えてみるか。
いやその前に目の前の信号機が赤になりそうだ!
どうしたらいいのか。
この焦りは必ずしも悪いものではないが、
今死に直結してしまうかもしれない。
そうだよ、
違う!やっぱり只のイタズラなんだよ。
あの赤信号で普通に停まろう。
そのままあの信号で停まる、停まるんだ!!!!
停まれ停まれ停まれ!!!と!ま!れーーーーーー!!!
叫びながらも俺は大通りの十字路をスピードを緩めず進んでいた…。
もし目の前で人が横断してたら?
警察のパトカーが対向車線で待っていたら?
叫びながらも俺自身の身の安全だけを考えていた。
不味い!このままじゃ本当に車を停めることが出来ない。
そう考え事をしてると俺の家を軽々通り過ぎてしまった。
まさかな、
まさか俺がビビってるのか?
声に出して初めて分かることもある、
震えているんだよ、その時に緊張が高ぶり、手もカタカタと震えてた。
俺は嘘だと思っていたこの状況を
さっきの信号無視で受け入れてしまっていたのだ。
「あーーーーーー!!!!!!」
ハンドルを硬く握り締め、
恐怖に支配されていくのが分かった。
一旦話を終わりにしてまた、このまま更新します。
これは心理描写を描く練習なので悪しからず。
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