無機質な街並みに、
暗闇のような影が伸びる。
「めんどうだなぁ」
男は呟くように愚痴をこぼした。
彼の身体にビニールのような、
トカゲの皮膚のような黒いスーツが縫い目に合わせて丁寧に折り重なる。
そのスーツは服というよりは皮膚だろう、
それほどタイトに見える。
そんななか先程の影は大きなビルの上から地上に這って、
この地域の一部を覆っている。
夜数少ない人々に影が身体に纏わりつく、
見た目には良いものとは思えない、
だが、纏わりついた影に一般の人間には何も感じられず、
ただただ影に、闇に飲まれて行く。
影に飲まれた土地や空間、人間は向こうの世界に逝ってしまうのだ。
ゆっくりだが影の勢力は確実に、人間界を包み込んでいる。
「気色悪いことするよな」
彼は一体誰に話しかけているのか?
彼は黒いカフェレーサーのバイクに跨り、
トカゲの皮膚を身体に履いているようだった。
でも、それは自らの手ではなく、自然に皮膚の上にのっているように見える。
そして彼は今大きな交差点の真ん中、歩道橋がありそれは円形であった。
その全ての真ん中、ここがまるで世界の中心かのように、彼は危険な場所に鎮座していた。
彼はバイクから降りる、
するとバイクは勝手に動き始め、路肩にバイクスタンドまで1人でに出て、安全な場所に止まった。
交差点の向こうから暴走している車が、
猛スピードでこちらに侵入してくる。
中央分離帯に車が当たり、
大きな音、火花、そして車体のフロントが大きく畝り宙に浮く。
彼の上空を飛びながら車は向こうの歩道にまで吹き飛んで行った。
「その運転手の体は返してもらう、
お前らに喰われたままでは、地球の土に還れないんでな」
発した言葉と同時に彼の跳躍は、
事故を起こした車の上まで一瞬にして接近していた。
爆発した車から黒い人型の異物が、勢いも借りて飛び出してきた。
「お前はまだ人間側か?地球はもう終わりなのぅぁっら!?」
異物は言葉を使える、たまにノイズのような音が聞こえる。
彼はその言葉に反応することなく、
容赦なく異物を叩く、
異物の顔であろうか?そこに気持ちいいぐらい完璧に拳が食い込み、言葉を遮る。
「黙れ、お前の汚ねぇ皮を剥いでやる、
その身体返してもらおうか」
彼の言葉にも小さなノイズが入る。
異物は街路樹まで吹き飛ばされ、
ガサガサとそこから出てきた。
「まあ、お互い生きるか死ぬかだからな、
それよりお前も酷いよな、人間の体をブん殴るなんて」
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。
息遣いは共鳴してるようであった。
-黒と白- Coming soon
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